2006/11/23
秘色の壺
陶片にきりりみひらく隻眼を残していづこ古代の 戦士は
アリバイになるかも知れぬ 篁に有明の月の落つ る見てゐる
雨の夜は発光してゐむおとうとの終焉(をはり) 視てゐし風折れ一樹
ふるるふるへるゼリーとともにゆれてゐる閉ぢら れて致し方なくチェリーは
御遺族の御意向なりと消されたる一句ことさら耳 目集むる
一年の間(あひだ)に老いて衰へて破(や)れ翅 拡ぐる枯色蟷螂
あかき唇(くち)残して褪色せる絵馬に女の祈願 のなまなましけれ
知りたきは余に儀にあらず本当に神さまの裔と信 じてゐるの?
きりきりと夏帯結びて立ち出づる矢でも鉄炮でも 持つて来い
梅干しの核噛み割つてもうをはり向後(きやうこ う)縁は切れたとおもへ
おろおろとさまよひゐるとでも聞かば憐れむ心に なるかも知れず
誇らかに湖水かがやく 龍神のあらはれし日の記 憶とどめて
冠組(ゆるぎぐみ)の帯〆締めてできあがり秘色 (ひそく)の壺に逢ひにゆくなり
冷たき水張りて見るべし魚ふたつ底に彫りたる青 磁深鉢
砧青磁(きぬたせいじ)・飛青磁梅瓶(とびせい じめいぴん)・花卉文鉢(くわきもんばち) この世のものか この世のものなり
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